「今日〇〇で△△が釣れたよ」
釣りを通じて知り合いになった人と、その日の釣果を教えたりすることはよくあると思います。
思いがけない大物が釣れた時は、誰かに自慢したくなるものです。
近年ではスマホが普及したことにより、誰でもそういった情報を発信することができるようになりました。
ただ、そういった何気ない些細な行為がきっかけで人が集まり、やがて釣り禁止にまで発展するリスクがあります。
人が増えればトラブルが増える——その事例
釣り場のトラブルに関しては全国に数多くあると思いますが、管理人自身が実際に目の当たりにした事例について紹介します。
東京都 豊洲ぐるり公園
2018年にオープンした公園で、当初は落ち着いた場所でした。
しかし、2019年頃から釣果情報がTwitterなどのSNSに次々と投稿され、注目が集まるようになりました。
ぴっちぴち✨#豊洲ぐるり公園 #ぐるり公園 #豊洲 #鰯 #イワシ #コハダ #サヨリ #サッパ #釣り pic.twitter.com/8ZNOWBvxOR
— はやと@はやとちゃんねる (@hayachan_h) October 24, 2020
ぐるり公園で釣れた魚を地面に並べてツイート。このような感じで、ぐるり公園にやってきた人が釣果情報をTwitterなどに投稿するようになりました。
YouTubeでも動画が続々と投稿されるようになりました。
そして、シーズン中は沢山の釣り人がやってくるようになりました。
その結果……
昨今、豊洲ぐるり公園での釣り人が急増しており、又、マナー違反や、投げ釣りによる事故が多発している為、新たに看板を設置致します。
豊洲ぐるり公園で釣りをされる利用者様へのお願い | お知らせ | 豊洲ぐるりパーク 江東区 豊洲ふ頭内公園
公園利用者である近隣住民からの苦情が増えたのでしょう。
現在では、仕掛けを投げる行為(投げ釣り、ルアー等)、まき餌(サビキ釣りで使うコマセ等)の使用は禁止となっています。
※ちなみに、まき餌の使用は元々東京都では禁止されています。
いつも公園をご利用いただきありがとうございます。
豊洲ぐるり公園ふ頭先端部 園路清掃のご案内(12月1日) | お知らせ | 豊洲ぐるりパーク 江東区 豊洲ふ頭内公園
この度、豊洲ぐるり公園ふ頭先端部の園路を高圧洗浄機で清掃する作業を以下の日程で実施致します。
連日大勢の釣り人がやってきた結果、サビキ釣りの時にこぼしたコマセや魚のウロコが至る所に散らばり、相当酷い状況になっていたであろうことは想像に難くありません。
(ところで、公園の清掃にかかる費用はどこから出てるのか、気になりませんか?)
東京都 隅田川エリア
元々シーバス釣りで人気のあるエリアでした。
しかし2017年頃に各所に看板が設置され、事実上ルアー釣りは禁止(特に橋周辺)となりました。
禁止となった理由は以下を参照。
※一部抜粋
隅田川でのルアー釣りの禁止要望
その照らされた所に魚が集まるらしく、そこに向けてルアーを投げ入れます。
隅田川でのルアー釣りの禁止要望 | 「都への提言、要望等の状況」月例報告(10月分) | 東京都
方向的に1つ目の橋桁に向けて投げ入れますが、外れて橋の上の人が歩いている歩道にルアーが飛んできます。
頭の上を4本から6本の針が付いたルアーが飛んで来たことが数回あります。
1度は足に絡まったり非常に危険な目にあいました。
いつか必ず針が眼に刺さったり、大怪我をすることになると思います。
ルアーが頭の上を飛んでくるようなことが日常あってはならないことです。
当時YouTubeや釣り番組などでそういう釣り方が紹介されていて、それを見た人達が隅田川にやってきて動画と同じ行為をして、やがて事故が起きた、といった流れです。
SNSでも情報拡散され、それを見た人達が隅田川にやってきて…といった流れも当然起こっていたと思われます。
「人が集まる」ことが問題に
上記の事例で共通する点として、元々釣り場としての利用が想定されてない公共施設に釣り人が集中することです。
一度こういう状況になってしまうと、個人に依存するマナーやモラルの向上を謳った程度では問題が解決することはありません。
人が集中しやすい釣り場は、大抵以下の条件に当てはまります。
- アクセスしやすい(近くに駅やバス停や駐車場がある)
- 無料で利用できる、お金がかからない
- 人口が多い地域(都市)
アクセスが良くて駐車料金が安い(あるいはタダ)。こういった場所は人が集まりやすいです。
特に人口が飛びぬけて多い東京都内の場所で「いま釣れてる」といった情報がSNSで飛び交うようになると、四六時中、釣り人がやってくるようになります。
早朝の時点で釣りができるスペースがほとんど無いのは当たり前、さらにそこから次々と人が集まってしまう…という状況にもなります。
海沿いの公園の場合、有料の海釣り施設のように入場制限して利用者の安全を確保してくれる場所ではないため、混雑によって生じるトラブルに巻き込まれたり、不快な思いをすることが極めて高いといえます。
人が集まる仕組みを作ってしまうインターネットサービス
SNS
例えばTwitterで、
「今日〇〇で△△が釣れたよ」
とつぶやいたとします。
それを見たフォロワーが「いいね」や「リツイート」を押したりします。
するとフォロワーのフォロワーにまで釣果情報が伝わります。
さらに、それを見たフォロワーのフォロワーが「いいね」や「リツイート」を押したりします。
するとフォロワーのフォロワーのフォロワーに(以下略
……
といった具合に、TwitterなどのSNSでは連鎖的に情報が伝わる仕組みになっています。
また、フォロワーは「同じ地域で釣りをしている」確率が高いといえます。
釣り人をフォローする理由は、大抵、自分の地域の釣り場の釣果情報が欲しいからです。
そのため、フォローしている人の釣果情報を見て、アクションを起こす(釣り場に行く)確率が高いといえます。
SNSでは利益を得る目的で活動しているアカウントもいます。
そういったアカウントのよくある特徴としては、ツイートするとき「#(ハッシュタグ)」を沢山つけています。
自身のツイートがより多くの人に見られるようにし、広告が張られたブログやYouTubeへ誘導するためです。
YouTube
動画サイトとしてよく知られるYouTubeでは、個人が投稿した釣り動画が多く見られるようになりました。
そのためYouTubeを見て釣り場にやってくる人が大分増えてきた印象があります。
管理人も釣り場で出会った方と話すとき、「YouTubeを見てここに来た」と聞くことが何度もありました。
YouTubeに投稿される釣り動画は、これからさらに増えていくものと思われます。
その理由は「広告収入」があるからです。
YouTubeから広告収入を得る条件の中に、再生数とチャンネル登録数があります。
利用資格の最小要件
3) 有効な公開動画の総再生時間が直近の 12 か月間で 4,000 時間以上である。
YouTube パートナー プログラムの概要と利用資格 – YouTube ヘルプ
4) チャンネル登録者数が 1,000 人以上である。
広告収入を得たい人は、この条件をクリアするために動画を沢山投稿する、という行動をとります。
釣り場の情報は需要が高いため、投稿する動画は必然的に釣り場関連の内容に偏るでしょう。
2020年から始まった新型コロナの影響で副収入を得たいという人が増えているため、YouTube内の釣り場動画は今後さらに増えていくことが予想されます。
ブログ、ホームページ(Webサイト)
Googleなどの検索エンジンで釣り場を調べると、大抵以下のページが並ぶと思います(特に前者)。
- キュレーションメディアによる釣り場まとめ記事
- 個人の釣行日記
キュレーションメディアの目的は「広告収入」です。利益を得るために運営されてるサイトです。
新型コロナの影響で釣りの需要が高くなっているため、今後さらに広告収入目当てのキュレーションメディアが増えていくことが予想されます。
スマホで釣り場の情報を扱うときの注意点
現在、個人がインターネットで情報発信を行う場合はSNSを利用することが最も多いと思います。
スマホからいつでも気軽に利用することができるからです。
ただ気軽な分、つい後先考えずに投稿しがちです。
投稿した内容が近所の釣り場の釣果だった場合、不特定多数に広まっていき、やがて釣り人が集まってしまう状況になる恐れがあります。
そこで、以下に注意すべきポイントを4つにまとめました。
1. 投稿を不特定多数に見られないようにする
SNSには投稿を見ることができる人を限定する機能があります。
- 非公開アカウント(鍵アカウント):許可した人(フォロワー)にだけ投稿が見られるようにする。
- ダイレクトメッセージ(DM):1対1でのやり取り。メール、チャット、LINEのトークのようなもの。
各SNSの公式ヘルプセンターにそのやり方が掲載されています。
※Facebookには非公開アカウントにする機能は無い模様。
2. 投稿に表示される位置情報に注意
SNSでは、どこから投稿したのかが分かるように位置情報が表示される機能があります。
位置情報が表示される条件として、スマホ本体とSNSのアプリの設定が必要になります。
- スマホ本体の位置情報サービスの設定
- アプリの設定
どちらかの設定をOFFにしておけば、投稿に位置情報が表示されることはなくなります。
各SNSの公式ヘルプセンターには、位置情報の設定について書かれてあります。
※アカウントを作成しアプリをインストールしたのが最近であれば、アプリの設定の「正確な位置情報」はデフォルトでOFFになっている。
3. 写真に写ってる背景や地面に注意
釣果写真を投稿するときに釣り場名を伏せていても、背景や地面で釣り場を特定されることがあります。
例えば、背景に建物が写っていたり、地面が公園のタイルだったり、特徴的な要素がひとつでも写っている場合は要注意。
写真から得られる情報+アカウントのプロフィールに普段行ってる釣り場の地域が書かれてある場合、釣り場を特定されやすいです。
同じ地域で釣りをしてる人が見れば、どの辺で釣りをしたのか大体見当がついてしまいます。
その地域に詳しくなくても、Googleマップのストリートビューや航空写真の機能を使って探せば、特定できてしまう場合があります。
こんな感じで、ストリートビューの機能で公園内の様子を見ることができます。ちなみにここの公園内の看板。
夜釣りで撮った写真も要注意。
一見すると背景が真っ暗で何も写ってないように見えるけど、画像編集アプリなどを使って明るさを調整すると、背景に写っているものが見えてしまうことがあるからです。
ちなみに、船やボートの釣りでも要注意です。
背景に陸地や海上に浮かんでいるものが写っていると、どの辺りで釣りをしてたのか特定されてしまうことがあります。
船やボートに乗ってる人は、「山ダテ」といって景色からポイントを覚える方法を知っています。
普段から通っている海域の景色には詳しくなっているため、その海域で撮った写真で陸地などが写っていた場合、大体どの辺か分かってしまうわけです。
釣り場を悟られずに釣果写真を投稿したい場合、対策としては以下の方法があります。
- モザイク加工ができるアプリを使う。
- 地面で釣り場を特定できないような場所で撮る。
モザイク加工ができるアプリは、App StoreまたはGoogle Playで「ぼかし」「モザイク」で探すと見つかります。
地面で釣り場を特定できないような場所は、例えば砂浜など特徴的な要素が無い場所のことです。
あるいは、魚の下に色の濃いビニール袋などを敷いて写真を撮るのも有効だと思います。
4. 写真のExif情報に注意
スマホで撮った写真(画像ファイル)には、位置情報(緯度と経緯)などが含まれています。
「Exif(イグジフ)」と呼ばれる画像データで、撮影したときの時間や機種など様々な情報が入っています。
SNSでは投稿時に写真をアップロードしたとき、自動的にExifを削除してくれます。なので、スマホでSNSを使う分には気にする必要はないでしょう。
ただし、ブログやホームページで釣り日記を公開している場合、そのまま画像をアップロードするとExif付きの画像を公開してしまう場合があるので注意が必要です。
Exifは誰でも見ることができる情報です。
パソコンだと簡単に見れます。スマホであればアプリを使えば見ることができます。
もしExifに位置情報が含まれていれば、その写真がどこで撮影されたものなのか特定できてしまいます。
釣り日記を書いてる方は、利用しているブログサービスで、画像ファイルをアップロードしたときExifを削除してくれるのか確認したほうがよいでしょう。